ゴー宣DOJO

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高森明勅
2020.11.11 06:00ゴー宣道場

天皇制は必要なのか?

随分、先の話のような気もするが、来年3月14日(これは私の誕生日!)
に奈良県で開催予定のゴー宣道場のテーマは、「天皇制は必要か?」
だとか。

なかなか刺激的なテーマ設定だ。

小林よしのり氏らしいアイデアと言うべきか。

小林・泉美木蘭・倉持麟太郎諸氏が否定派、笹幸恵・高森両名が
肯定派に分かれて、ディベートを展開する計画という。
率直に言って、私はディベートなるものが余り好きではない。
勿論、それが知的トレーニングとして有効性が無いとは思わない。

しかし、自分が本気で信じていない命題を、相手を言い負かす為に、
屁理屈を捏(こ)ねても徹底的に主張し抜く、というゲームは、
私には少し肌が合わない。

言葉が本来、持つべき誠実さや尊厳を裏切るようで、一般的に言って、
とても前向きにはなれない。
相手の言い分にも謙虚に耳を傾けつつ、己れの思想的全重量をかけて、
真摯かつ真剣に言葉を交わらせる、真の意味での議論こそ望ましい。

しかし、この度の場合はいささか異なる。
むしろ願ってもない企画かも知れない。
と言うのは、皇位の安定継承を巡る議論についても、皇統の維持、
皇室の存続そのものに直結する、文字通り最重要課題(諸々の重要課題の中の
1つではなく、重要課題中の最重要課題、唯一至上の最重要課題)
であるにも拘わらず、皇室を敬愛する(はずの)人々の姿勢に
もう1つ迫力を欠くのは、何故か。

日本及び日本人にとって、天皇・皇室の存在は本当に必要なのか、
という根本的な問いを迂回して、その存在を漫然と自明視している為に、
その切実な存在意義を“身に沁みて”感じ取れていないから、かも知れない。

私以上の世代なら、逆に天皇・皇室は無用であり、むしろ有害でさえある、
という見方が、少なくとも知的な階層の人々の間では、
ほとんど自明視されていたのを覚えているはずだ。

私自身の個人的な体験としても、倉敷にいた頃、書店に並んでいる
本はほとんど“反天皇”一色であり、少なくともこのテーマに限定して言えば、
私は(家族を除き)周囲から(教師も含めて)ほぼ完全に孤立していた。
そんな中で、否応なしに天皇・皇室の必要性を繰り返し自問自答せざるを
得なかった。
ところが、今は状況が全く異なる。

天皇・皇室への公然たる否定どころか、控え目な疑問の提示すら、
逆にタブー視されかねない雰囲気もある
(これは、天皇擁護論の理論的な勝利によるのではなく、
昭和天皇をはじめ皇室ご自身の、長年にわたる弛〔たゆ〕まぬ
ご献身による部分が、圧倒的に大きいのだが)。

それがかえって、天皇・皇室についての根源的な考察
(更に、その存在意義の再発見、腑〔ふ〕に落ちた納得)を、
結果的に阻んでいる気配がある。
そのような条件下では、意図的にディベートの形式を利用してでも、
考え方を鍛え、深める必要があるだろう。

そういう意味で、奈良県の道場で新しい挑戦に取り組むのは有意義だと思う。
小林よしのり氏と高森が天皇・皇室の存在意義を巡って、
ディベート的な形ではあれ、真っ向から議論を闘わせるというのは、
手前味噌ながら、少し面白い趣向かも知れない。

しかも、理論面では小林・高森を凌駕する可能性がある、
倉持麟太郎氏もアンチの側に立つというのが、見所になりそうだ。

更に泉美“探偵事務所”と恐れられる調査能力と、
一流の庶民的感覚を兼ね備える泉美木蘭氏こそ、
隠れたラスボス女王的な存在かも。

ところで、当日、私は参加できるだろうか。

勿論、今から優先的にスケジュールに組み込むにしても、
まだ不確定要素が残っている。
万が一、私が参加できない場合、笹幸恵氏に奮闘して戴くことになろう。
天皇をテーマにした道場で私が不在というのも、予定調和を壊す意味では、
かえって面白い展開が期待できるのではないだろうか。
もとより私自身としては、今後二度と無さそうな企画なので、
是非とも参加したいと考えている。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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